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いつものようにスクプレ編集部にマスコミ試写の招待券が送られてきた。
同封のチラシに描かれていたのは、頭部から怪光線を発射しているブリキ玩具のような巨大ロボット。ロボットに比べやや遠慮気味の登場人物3人の写真の前にタイトル『スカイキャプテン
ワールド・オブ・トゥモロー』の文字が見える。
中央でキリリと空を見上げるヒーロー風情の男がジュード・ロウ。カメラを手にこれまた上のほうを見上げているイングリット・バーグマン風のグゥイネス・パルトロウが左手に立つ。そして手を腰に当て堂々たるポーズでキメているアンジェリーナ・ジョリーの姿も。アンジーはなぜか眼帯までしている…。これはどうやら、ヤバそうだ。
「じゃ、これ伊藤さん行ってきて」
こういう映画がきた時の、編集部の決断は早い。
『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』、タイトルからしてかなり駄作指数の高そうな映画である。編集部、暗黙の了解…。そう、この類は私の担当だ。
この作品のアメリカでの批評は真っぷたつに割れている。どうやら人によって好き嫌いが激しい作品なのだろう。
私のお気に入りであるグゥイネスが出ているとはいえ、とにかくこれといった期待を抱くことなく試写会場へと足を向けた。そして、1時間47分後…。
皆さんはおぼえているだろうか。子供の頃あこがれた空想科学の世界を…。空飛ぶ巨大ロボット、レーザー銃、アンドロイド、空水両用戦闘機。
テクノロジーはよく分からないけど、なんとなくできちゃうんじゃないか、またはできたらいいなぁ、なんて、想像力だけをフルに生かした夢の発明の数々にかつて心をときめかせたオトナたちなら、この映画は5つ星、間違いなしだ
缶詰の空き缶でロボットを量産していた子供時代を持つ私自身は、この映画、わくわくしっぱなしだった。
作品自体は、人間以外は全てCGという徹底したハイテク世界だというのに、画面をセピア色でわざとぼんやり曇らせ、わざわざ1930年代を舞台にしたストーリー展開も、アナログ感をより際立たせている。
J・ロウ演じるスカイキャプテンと、グゥイネス演じるド根性新聞記者ポリーとの、ただでさえビミョーな関係に、眼帯のスーパー艦長、A・ジョリーが加わる。このちょっとした3角関係の構図もどこか古めかしさを感じさせるものの、ユーモアいっぱいで大いに楽しめる。
スカイキャプテン曰く、ポリーは annoying newspaper reporter 「うっとうしい新聞記者」
であり、かつて恋仲であったにも関わらず、彼の浮気を勝手に断定し、愛機P-40ウォーホークに破壊工作を行った、らしい。
一方、ポリー曰く、スカイキャプテンは南京で「任務の一環」と称し、どこかの女とイチャついていた、そうだ。
この過去の過ち?を引きずり、いがみ合いながらも冒険を続ける2人を空飛ぶ戦艦で迎えた女艦長フランキー
(A・ジョリー) はポリーの姿を見て、一言。
ポリーは人間なので当然 What 「何」 ではなく Who 「誰」 を使って、Who is
that? 「あれは誰よ」 というべきところを、まるで取るに足らないモノのように呼んでいるところが、ミソだ。どうやらこのフランキーこそが、例の
「南京の女」?
ちなみにA・ジョリーの出演時間は驚くほど短いのだが、彼女の見せ場は全てそこに凝縮されている。非常においしい役なので、アンジーファンは必見である。
監督・脚本を担当したケリー・コンランがこの作品に着手したのは、10年前だ。自宅ガレージでパソコン相手に1人始めた、映像作り。それから4年後、完成した6分間の映像
The World of Tomorrow がプロデューサー、ジョン・アヴネットに認められ、長編映画として製作が開始されたのだという。
今回共同プロデューサーを務めたジュード・ロウも、コンランの映像に魅了された1人で、すぐに主役を演じる決心をしたらしい。
現在全米公開中のロマンチックコメディ “Shall We dance?” ホラー映画 “The
Grudge” は、日本映画 『Shall We ダンス?』 『呪怨』 のリメイクだ。ハリウッドの多くの映画関係者が認めているように、今全米映画界は明らかなネタ切れ状態に陥っている。
そんな中、独自の世界観と映像美を生み出したケリー・コンランの登場には、非常に大きな意味があるのではないだろうか。
自分の中の子供心に久しぶりに触れてみたい人や、ありきたりのアメリカ映画にいい加減飽きた人には特にオススメの快作である。
執筆: 伊藤 博 |