
まともなレビューは(といってもそれほどまともでもないが)、公開時のものがあるので、そちらを参照あれ。今回の注目ポイントは脇役。かなりちょい役まで濃くて笑わせてくれる脇役にスポットを当てレビューを展開してみよう。
1.バド 落ちぶれたアル中おやじ
ビルの弟バド(マイケル・マドセン)は殺し屋稼業から足を洗いストリップバーでbouncer (用心棒)として働いている。しかし、たびたび遅刻し、勤務態度の悪い彼は、とうとうボスにぼろかすに言われて、仕事をクビになる。それでも文句のひとつも言えず、おまけに、その去り際にも、ダンサーから用事を言いつけられる。
| Budd,
honey, the toilet is at it again. There’s shitty
water all over the floor. |
| バド、トイレがまた詰まったのよ。床中が汚水まみなの。 |
と詰まったトイレから溢れかえったウン○水の掃除にも逆らえない。実際に、そんな掃除を私もしたことがあるが、これはかなりへこむ…。さて、そんな彼も意外とやる部分もかいま見せるのだが、最後のやられ方はかなり惨め。
タランティーノ映画常連のマイケル・マドセンは、レザボア・ドッグスではオレンジを演じ、凶悪なきれっぷりを見せていたが、あの近づきがたいほどの怖さは、この映画では影を潜め、どうしようもなく落ちぶれてしまっている。
しかし、タランティーノ・ファンには、この落ちぶれた姿が、逆に妙な哀愁を感じることができて面白かった。オレンジなら、ストリップ・バーのボスの耳はなくなっていたことだろう。
2.パイ・メイ 史上最強・最悪のじじい
香港映画といえば、必ず出てくる自慢の白髪の長いヒゲを蓄え、白い眉毛もあり得ないほど長く、戦えば鬼のように強い老人。そんな最強のじいさんがパイ・メイだ。
ブライドが受ける過酷な修行は、若き日のジャッキー・チェンの『酔拳』や『蛇拳』など一連のカンフー映画に出てくるおきまりの修行シーンにそっくり。パイ・メイとは白眉との意味で、いちおう実在した伝説の人らしい。
とにかく、この映画のパイ・メイは存在自体が笑える。また必要以上に、事あるごとに、白髪のヒゲを掻き上げる仕草も笑わずにはおれない。
Vol.2 のプレミアムボックスには、なんとパイ・メイ・キーホルダーなるものが付いていて、思わず買ってしまったが、このパイ・メイも、やっぱりヒゲを触ってる…。Vo1.1
のときのオキナワTシャツもそうだったが、これも間違いなくうちの家宝になるだろう。
せっかくなので、パイ・メイの会話も引用しようと思ったら、彼はずっと中国語(広東語)を話して、ひっとことも英語は喋ってなかった…。この頑固じじいめ。
3.エル・ドライバー どエスの眼帯娘
Vol.1 で白衣に眼帯という強烈なコスプレで登場したエル・ドライバー(ダリル・ハンナ)はポルノ女優がモデル。彼女もパイ・メイと同じく強烈な印象と笑いを残してくれた。アル中バドとの取引で、毒ヘビを金の詰まったケースの中に忍ばせておいて、バドが金を手にした瞬間、彼はヘビにかまれる。それを見て、エルは平然と言い渡す。
| I'm
sorry, Budd. That was rude of me, wasn't it? Budd,
I'd like to introduce my friend, the black mamba.
Black mamba, this is Budd. |
| 悪かったわ、バド。なんて失礼なのかしら。バド、私の友達を紹介するわ、ブラック・マンバよ。ブラック・マンバ、この人がバド。 |
紹介もせずに引き合わせてしまって悪かったわ、ということだが、当然、この場面でのんきに言ってるセリフではない。
ブライドのコード名がブラック・マンバであったのも皮肉が効いているが、これをサディスティックに優雅に言ってのけるエルが面白い。
その後も、毒が回り、意識がもうろうとしてバドが死にいくときも、ブラック・マンバという毒ヘビの怖さをとうとうと説明する。その途中で、
| "The
amount of venom that can be delivered from a single
bite can be gargantuan. " |
| 「ひと噛みで、分泌される毒の量は膨大である」 |
| You
know, I've always liked that word "gargantuan.
" |
| 私は、この「膨大」って言葉がずっと好きだったわ。 |
| I
so rarely have an opportunity to use it in a sentence. |
| めったに文章の中で使うことがないでしょ。 |
てなセリフをちょこっと挟む。普通に、説明するだけでなく、こういった小ネタを入れるところがタランティーノっぽい。
この後、タランティーノが『フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ』と名付けたいうブライド対エルの、この映画の最大のアクション対決に続くが、これが最高。長身2人(サーマン
183cm、ハンナ 178cm)の戦いっぷりは、迫力満点で、ちゃんとオチまで用意してくれている。
しかし、この姿からは『スプラッシュ』(Splash, 1984)で華奢で可憐、いまにも壊れそうな人魚をダリル・ハンナ演じたことは想像できない。あの頃はかわいかった。今もきれいだけどねぇ…。
4.その他の濃い脇役
Vol.2 には、このほかにも濃い人たちがいっぱい登場する。メキシコの売春宿を営業し、きついスパニッシュ訛りの英語を話す老人エステバン。ビルの親代わりだという彼は、物腰は柔らかそうに見えて、ときおり怖さを見せる。きつい訛りだが、演じているのは、実はアメリカ人の俳優マイケル・パークス。Vol.1
では、教会に現れた保安官を演じてた。このときはテキサス訛りがきつかった…。
もう1人のお気に入りは、終盤に登場する東洋人の殺し屋カレン。いきなりショット・ガンをぶっ放し、ブライドを窮地に追いつめるが、緊迫した状況の中で交わす、2人の間抜けな会話は笑いを誘わずにはいられない。
最後に、私のお気に入りの彼を紹介しよう。冒頭の教会の場面で出てくるオルガン奏者、そうサミュエル・L・ジャクソン御大だ。唐突に
| Y'all
got a song? *
y'all = you all |
| 音楽は決まったのか? |
と、独特の声としゃべり方が聞こえた瞬間、思わず心の中で「キターーーッ」と叫んでいた。実際に叫ぶと、ほかのお客に迷惑なので…。その後は、ひたすらサミュエル節で、少し演説をしただけで、あっさりと出番は終わるのだが、相変わらずこれだけで強烈なインパクトを残していくところが憎い。
など、主役以外にもたくさんカクレ主人公とも言える濃いキャラクターが満載のこの映画は、何度か復讐することで、きっと新たな発見が待っているだろう。
執筆: 池下 裕次
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